北海道新幹線と青函トンネル|最終回 結局のところ目的をどこに置くのか/Newsの検証
すべての議論が目的をちゃんと定めていない。
この連載では、2016年3月に開業した北海道新幹線と何かと問題視されやすい青函トンネルについて、論点や“真”の課題を明らかにしつつ、ニュースの検証をしていきます。
そもそも“東京―新函館北斗間4時間の壁”というテーマが正しいのか?
なんども“4時間”という数字がひとり歩きしていますが、なぜこの数字が登場したのか。おそらく根拠はなく、「4時間2分」という設定なので、「あと2分くらい何とかならないのか」という期待と、スーパーの値段のアレ(1980円とかいう値決め的なもの)による心理的な影響だと思います。
例えば、東海道新幹線のぞみは東京―広島間を3時間58分で結んでいます。
いやー。さすがですねー。JR東海さんわかっていらっしゃる。
しかし、新幹線の競合との航空機とのお客さん獲得シェア争いでは、
(出所:https://www.westjr.co.jp/company/ir/library/fact/pdf/2014/fact07.pdf)
東京―広島間は59.6%で新幹線の勝ち!
(出所:https://www.jreast.co.jp/investor/factsheet/pdf/factsheet_03.pdf)
東京―新青森間は78%でこちらも新幹線の勝ち!
となっています。
そこに来ての東京―新函館北斗間はどうなるかが見ものというのが現在置かれた状況。。。
但し、東京―函館空港が飛行機なら2時間40分であるところを見ると、やはり北海道新幹線の4時間2分というのは、ちょっと不利な印象を受けますね。。
ただ、東京―秋田が新幹線3時間37分、飛行機2時間40分であり、新幹線のシェアが60%獲得できていることを見れば、そんなに4時間2分を悲観するものでもない気がします。
むしろ気にするべきは東京ー札幌
新函館北斗駅が先行開業した北海道新幹線ですが、最終的には札幌駅までつながる予定です。そう考えたときに重要なのは札幌への到達時間である気もします。
そもそも、東京―博多間も新幹線での所要時間は5時間ほどであり、新幹線よりも航空機で移動する旅客シェアが多い現状もあります。しかし、「東京と新幹線でつながっている」という感覚となによりも航空の代替手段としての陸路があるという点での都市としての信頼感は大きいものがあります。
おそらく東京―札幌間も5時間ほどと東京―博多間と同程度となり、その旅客の多くは航空機を利用することも容易に予想されますが、これまでの博多の発展に鑑みると、非常に重要な意味合いを北海道新幹線は託されているとも考えられます。
さらに言えば東京への所要時間よりも、札幌から見たときに、函館青森盛岡と道南エリアや東北地方がより便利にそして身近になったことを最大限に生かし、札幌、さらには北海道の経済活性化につなげていけるのではないでしょうか。
語る人により、問題の目的は異なる
このように札幌市や市民の目から見ると青函トンネル問題は存在せず、「北海道新幹線開業ありがとう!」でしかなく、「東京へ4時間の壁?なにそれおいしいの?」状態でもあります。
逆に建設会社やゼネコンは「新技術開発などのために第二青函トンネルを安く短工期でやる挑戦は必要だ!」となりますし、国も建設省は「トンネル推進!バンザイ!」ですし、運輸省は「安全第一!新車両開発!バンザイ!!」でしょうし。
JR東日本は「安全確保の上で、東京の人を観光へ」でしょうし、JR北海道は「経営が火の車なので、なんとか儲けにつなげたい!」でしょうし・・。
東京や関東の人は、「へー北海道まで新幹線で行けるんだ―」「でも函館だけかー」状態ですし・・・。
つまり、自分への影響いかんで、その問題が問題なのかも変わっていくものであると言えます。
北海道新幹線をどう活かしていくのかをJR北海道をはじめとして北海道庁、東北の各県、そして国、それぞれがしっかりと考えて「4時間の壁」というなぞの問題を正面から向き合ってもらいたいと考えます。
(とはいえ、博多という先行モデルケースがあるので、大いに参考にして頂きたいところ)
(おわり)