北海道新幹線と青函トンネル|第1回 議論の何が問題か/Newsの検証


北海道新幹線が振るわないのは、青函トンネルのせい!・・なのか?

この連載では、2016年3月に開業した北海道新幹線と何かと問題視されやすい青函トンネルについて、論点や“真”の課題を明らかにしつつ、ニュースの検証をしていきます。

20170303_Newsの検証(北海道新幹線)_TOP画像

「4時間の壁」という大悪人??

2016年3月26日に新青森―新函館北斗間が開業し、東京と北海道が新幹線によって結ばれました。しかし、華々しい開業のニュースの一方、早速問題提起するメディアも多くありました。

JR北海道は2016年3月26日に開業する北海道新幹線について、東京~新函館北斗間の所要時間を最速4時間2分とすると発表した。(中略)北海道新幹線区間には、青函トンネルを含む在来線との共用走行区間(約82km)で最高速度が140km/hに抑えられるという特殊事情がある。これまで、東京~新函館北斗間の最速所要時間は「約4時間」と見られていたため、飛行機利用との分岐点となる「4時間の壁」を破るかどうかに注目が集まっていたが、こうした事情を踏まえ、速達性よりも安全性を重視した。
(北海道新幹線、東京~新函館北斗間の所要時間は4時間2分 – 4時間切りならずhttp://news.mynavi.jp/news/2015/12/05/075/

問題になるのが東京-新函館北斗の所要時間が「4時間を切れない」という現実だ。原因はハッキリしている。最新鋭のE5・H5系という車両を投入している北海道新幹線は、宇都宮から盛岡までは時速320キロメートルという国内最速で疾走する。だが、青函トンネルとその前後の「在来線貨物列車との共用走行区間」82キロメートルについては、時速140キロメートルに減速を強いられているからだ
(北海道新幹線「4時間の壁」阻む3つのハードルhttp://toyokeizai.net/articles/-/152785

多くが、「4時間の壁」ということを問題として挙げており、その原因を「青函トンネル」にあり。と断罪していました。さらには、

北陸新幹線が開業前の予測を大きく上回り、1年余りで利用者1000万人の大台を突破したのに対し、北海道新幹線は開業後半月間の平均乗車率が27%にとどまるなど出だしで苦戦している。
新幹線の移動時間が4時間を超すと、乗客は空路に流れるといわれる。いわゆる「4時間の壁」だ。東京駅から石川県の金沢駅までは北陸新幹線で2時間半だが、北海道北斗市の新函館北斗駅までは4時間余り。「4時間の壁」が2つの新幹線の明暗をはっきりと分ける格好となった。
(北陸・北海道両新幹線は明暗くっきり 「4時間の壁」は大きかったhttps://zuuonline.com/archives/104351)

と、業績までも「4時間の壁」(というなぞのもの)のせいにされており、ここまで書かれると「4時間」というのが大悪人のような気までしてきます。

 

「4時間の壁」を解決するには「第二青函トンネル」??「トレインオントレイン」??

挙句の果てに、その解決策として、
本州と北海道を結ぶ新たな海底トンネルの建設構想案を近く国土交通省に提出する。(中略)新トンネルが完成すると青函トンネルは新幹線専用となり、時速260キロの高速走行を可能とすることで、新函館北斗―東京間は3時間台で結ばれるようになる。(青函に新たな海峡トンネル構想 貨物とカートレイン輸送http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170215-00000002-hakoshin-hok

と、もう一本海底トンネルを掘る話だとか、

JR北海道は「トレイン・オン・トレイン(TOT)」という構想を発表している。コンテナ車を台車ごと新幹線貨車に積み込み、新幹線電気機関車が時速200キロメートル以上で走行するというものだ。すでにモックアップ車両も作成されている。(「貨物新幹線」は本当に津軽海峡を走るのか:東洋経済オンラインhttp://toyokeizai.net/articles/-/102046

という、新技術開発の話だとかがわんさかニュースになっています。

 

「課題」を疑う

各社の論調は、それぞれ視点や持っていきたい結論が違うため、一律に語ることは難しいのですが、結論に至るまでの問題提起の流れはどれも同じで、

20170303_Newsの検証(北海道新幹線)_各社の論調

という論調になっています。
この論調を基本として、これこれこういう課題があって、大変だから、こうするべきだがいろいろな意見があり、

20170303_Newsの検証(北海道新幹線)_各社の論調2

となっているのが各社の論調です。
もちろん、トンネル工事により多額の売上が見込める建設会社主導の研究会など発の記事であれば、「問題だから第二青函トンネルを掘ろう」となる訳ですし、新たな車両の製造により多額の売上が見込める重工系発の記事であれば、「問題だから貨物新幹線を作ろう」となる訳です。
ただニュース記事に本来必要なのは中立的な立場で、「本当にそれが問題なのか」を疑うところから始めてもらいたいものですが、中々そのような記事が見つけられなかったので、本調査団自身で論じていくこととします。

20170303_Newsの検証(北海道新幹線)_各社の論調3
今回は、各社の論調の核である、「4時間の壁」にスポットライトを当てることから始め、
本当に4時間を切ると業績が上がるのかを検証していきたいと思います。

そして最後には、北海道新幹線だけでなく貨物輸送にも配慮した、青函トンネルの今後に関する問題に対して、“真”の課題提起もしていくという、他にはない調査論考をおこなっていきたいと思います。
(つづく)


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