ニュース検証|都心を低空飛行する羽田新ルート:”真”の問題は何か?


Yahooニュース(2月8日)「都心を低空飛行する羽田新ルート 「国益」と住民の不安
http://news.yahoo.co.jp/feature/504)」をデータの面から検証していき、”真”の問題について考えます。

20170208_羽田空港とスカイツリー

記事概要:

羽田空港の北およそ1キロメートル、東京湾に浮かぶ城南島海浜公園では、日によって頭上を数分おきに巨大な機体が飛び交う。飛行高度は約100~150メートル、騒音レベルは最大値で80~90デシベル。音のうるささは「パチンコ店内と同程度」といわれている。
実は今、都心の市街地の真上で、飛行機が高度300メートルほどの低空で飛ぶという話が進んでいる。

いきなりすごい出だしですね。そんな騒音が24時間ひっきりなしに聞こえるようになるのはたまりませんよね。
そしてこの後、住民の反対声や地元大田区議の話があり、羽田・成田の歴史の話があり、いよいよなぜ新ルートを設定するのかという話になります。

国交省は、新ルート採用による増便で「羽田の国際線旅客数が約1.5倍(1964万人)に増える」との予測を公表。経済効果は年間6500億円になると見込んでいる。
今は機体性能が向上し、かつては100デシベルを超えることもあった飛行機の騒音も、70デシベル程度に抑えられていますから、かつてのような騒音被害は生じない

という国交省の意見が展開されています。まさに賛否両論を上げているわけです。
しかし、どういうわけか、この後で突然横田空域(米軍により飛行が禁止されている空域)の話になります。

民間機の大半は横田空域を避けるルートを取っている。国交省が検討中の新ルート案は、一部がこの空域にかかっており、「実現には日米間での運用調整が必要となる」

調整は官公庁の専業であるために、「そりゃそうだろう」という感想ですが、最終的には、「米軍と調整するのだから住民とも調整してよね」的な意見が書かれて記事は終わっています。

 

本当に300mの高さで飛ぶのか?

我々運輸・交通調査団は、賛成反対の議論に関しては、一切関与するつもりはありません。しかし、飛行経路が変わるという部分においては、大いに興味がある内容です。
さっそく、記事の元となっている国土交通省の資料を見ていくことにしましょう。

20170208_Newの検証_羽田_南風120170208_Newの検証_羽田_南風2

 

(出所:国土交通省首都圏空港機能強化技術検討小委員会配布資料))
確かに、新宿区や渋谷区では3000ft(約900m)程度、品川区では1500ft(約450m)程度で着陸進入していくことが計画されています。しかし、「都心全域を300mで飛ぶ」という訳では無いということが分かります。少なくとも東京タワーにゴツン。という心配はしなくて良いということになりますね。
とはいえ、飛行している航空機はいつかは地上に降りなければならないので、徐々に高度を下げていきますよね。となるとどんな感じになるのでしょうか。
国土交通省の発表した飛行経路図を元に大まかに飛行経路上の状況を東京を西側から見た俯瞰図で想像図を描いてみました。(東京タワーは飛行経路直下ではないですが、参考として書いてあります)

20170208_Newの検証_羽田_高度と高さ

ああ、よかった。東京タワーにはぶつからないんだ。(ホッ)ということがよく分かります。その上、300mの高度になるのは、大井ふ頭に入ってからになりそうだということも分かります。しかも、飛行機の大きさも高度1500ftであれば、目がいい人ならANAかJALかが見極められる程度の大きさで飛んでいるという感じですので、東京タワーにはぶつからない感じですね。(しつこい)

 

どの位の騒音かはさておき、他空港と比較検証!

記事で問題視しているのは、新ルートによる騒音被害です。正直なところ、実際に飛んでみないと、どんな感じで聞こえるかが分からないのが音の聞こえ方予測の難しいところです。
というのも、

羽田空港のこれから:いろいろな場所での聞こえ方」である通り、

・経路付近の航空機の最大騒音レベルは、高度及び機材によります。
・飛行機の音は、飛行経路から離れると聞こえにくくなります。
・また、屋内では、建物の遮音効果により、飛行機の音は大幅に小さくなります。

なので、厳密にどのくらいの騒音が発生するかは「飛んでみないと分からない」上に、それぞれ人によって聞こえ方感じ方が違うので賛否両論が巻き起こっているのだと思います。

ですので、騒音に関しては論ずることはせず、客観的視点で他空港との比較をして見ることにします。
前述の国土交通省の資料にちょうど大阪伊丹空港、福岡空港、英国ロンドン、米国ニューヨークとの比較資料がありましたので、再度引用してみます。

すると、

20170208_Newの検証_羽田_伊丹 20170208_Newの検証_羽田_福岡

20170208_Newの検証_羽田_londonpng 20170208_Newの検証_羽田_NY

(出所:国土交通省首都圏空港機能強化技術検討小委員会配布資料))

結構どの空港も、都市上空を飛行して着陸している様子がよく分かります。
ちょっとこの地図だと分かり辛いので、5空港別に主要施設を整理すると、

20170208_Newの検証_羽田_5空港高度と高さ

となり、特に羽田新ルートが前例のないほどの悪条件であるという訳ではなさそうですね。

 

本来問題とすべきなのは、「東京をどういう都市にするのか」

実はこのニュースの基となった、国土交通省の説明には、羽田新ルートの前段がありました。その部分をしっかりと読むと今回の記事の全容が理解できます。

20170208_Newの検証_羽田_比較
(出所:国土交通省首都圏空港機能強化技術検討小委員会配布資料))
特にこの2ページ目の海外の空港との比較を見ると東京が世界三大都市であり続けるためには、ニューヨーク、ロンドンと同程度の発着回数が求められることがよく分かります。本調査団の主要テーマでもある運輸・交通は経済成長の重要な要素の一つですので、国土交通省が首都圏空港の発着回数の拡大に腐心するのもよく分かります。

特に東京の競争力の低下は、日本の競争力の低下に繋がるので、国際社会とつながる首都圏空港インフラの強化は非常に重要な課題であると言えます。その上で、国土交通省は20年前にも新空港の検討や、既存空港の活用までもちゃんと考えていました。

20170208_Newの検証_羽田_機能強化の必要性

(出所:国土交通省首都圏空港機能強化技術検討小委員会配布資料))
その上で、ニューヨーク、ロンドンに並ぶ空港インフラの整備は「羽田の強化」が最も近道かつ効果的と結論付けているのです。
つまり、問題にすべきは羽田の新ルートがどうとかではなく、東京一極集中を辞めますか?どうしますか?日本は成長をやめますか?どうしますか?の方が実は主題ではないでしょうか。


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