Newの検証|2階建て新幹線引退:決断の背景を想像する
「上越新幹線にE7系投入 全車2階建てのE4系は引退へ 2018年度から(のりものニュース(2月8日)https://trafficnews.jp/post/67672/)」を検証していきたいと思います。
記事概要:
JR東日本は2017年4月4日(火)、上越新幹線に、2018年度から2020年度にかけてE7系電車を順次投入すると発表しました。
E7系は現在、北陸新幹線で使用されている車両です。これと同一仕様の車両(12両×11編成)が、2018年度から2020年度にかけて、上越新幹線へ投入されます。そして、これにともない、全車両2階建てのE4系「Max」は、2020年度末までに引退を迎えます。
Yahooニュースでも取り上げられてた通り、2階建て新幹線があと3年で引退してしまうということです。筆者も思い入れがある車両であり、一抹の寂しさを感じます。
JR東日本は、車両をE7系に置き換えることで車内サービスなどの向上を図るとしています。車両の更新により、上越新幹線を走る営業用車両は、E2系とE7系の2種類になる見通しです。
本当にサービス向上だけが目的なのか
そもそもなぜ、現行運用のE4系をE7系に置き換えようというのか。ニュース記事にある通り、本当にサービス向上だけが目的なのか。もちろんE4系の老朽化という問題もあると思いますが、他に何かJR東日本としての考えがあるのではないのか。と感じてしまいます。(もはやこれは病気ですね・・。そもそもを考える病とでもいうのでしょうか)
ここはやっぱり一次資料に当たるという意味で、JR東日本発表の元ネタを探してみましょう。すると・・ありました。
このようにJR東日本の発表資料を見ると、確かに乗客にとってうれしいサービスが拡充される印象を受けます。特に2階建て新幹線の座席は3席が一体となったシートで、リクライニングもできないといった仕様なうえ、デッキから座席までが狭い階段を上るといった、バリアフリーとかいう言葉すらなかった時代の車両であったことも否めません。
しかし、乗車定員数1634人(16両)という収容力はずば抜けており、この定員数は置き換えられるE7系の924人(12両)や東海道新幹線700系の1323人(16両)と比べても「世界最大級の定員の高速列車」という称号はゆるぎないものです。
その定員規模を捨ててでも快適性に舵を切るJR東日本が見ている視点はどのようなものなのでしょうか。
考えられる仮説を上げてみましょう。
新幹線の営業に影響を与えそうな変数を因数分解すると、
「売上=運行本数×乗車客数」で決まり、「運行本数は運行速度によって決まる」ということになります。
ということはつまり、
1) 新幹線全体の運行速度が新型車両の登場などにより高速化が進み、E4系の遅さが邪魔になってきた
2) そもそもの客数の減少によりそのような定員規模の車両を運行する必要がなくなった
という大きな2つの仮説が考えられます。
ちょっと調べてみると、
JR東日本の関係者に聞いてみると、「近年の新幹線定期券利用者数は頭打ちで、都心回帰が始まっていることからも、収容力の高い新幹線を維持する必要がなくなってきた」とのこと。
E4系は、その収容力が特徴ですが、人が大勢乗れば車両の重量が大きくなるのは避けられません。そのため最高速度が240km/hと低いという欠点があり、近年の新幹線高速化の波に乗り遅れていました。高速化を進める東北新幹線からは、2012年に撤退しています。(タビリス E4系が引退へ。2018年から更新開始。「2階建て新幹線」は歴史的使命を終えたのかhttp://tabiris.com/archives/e4/)
前述の2つの視点はどちらも正しいことが、上記Webサイトの記事からも証明されました。
本当に客数減と高速化の波への乗り遅れだけが原因なのか
しかし、営業(売上)の視点からのみ、物事を捉えると事実を見誤るような気もします。E4系を維持していこうとしたら他にどのような視点から問題が起きるでしょうか。
例えば、メンテナンスの視点から見れば部材調達が困難になったとか、E4系を分かる人が退職していくなど、また設備の視点から見れば他の系に比べ重い新幹線が通ることで線路への影響もあるのかもしれません。置き換えの利用に関しては多くの視点から、そのメリットが語られるでしょう。
ただ、おそらくこのE4系引退という事象を説明する最も適切な表現は、「JR東日本がLCCの経営効率性に着目した」ということではないかと思います。
ただでさえ、東京駅には、北海道新幹線、東北新幹線、秋田新幹線、山形新幹線、北陸新幹線、そして上越新幹線と6つもの新幹線が乗り入れており、さらにE2系、E4系、E5系、H5系、E6系、E7系、W7系と7系が運用されています。
系を増やすと、遅延など発生時に余剰の系で代用運用することが困難になります(車両の融通の面からも運転士の融通の面からも、ダイヤの面からも。。)
LCCは運用する機体を一機種(もしくは少ない機種数)にすることで、機体・パイロットのやりくりの融通性やメンテナンスコストを徹底的に削減しています。JR東日本ももししたら、系を絞ることで、しなやかな経営ができるのではと考えたのが、本当のところでのE4系引退なのかもしれません。